簑曳矮鶏

 天然記念物調査報告 動物之部第三輯 文部省 昭和13年1月20日

  39頁~40頁 畜養動物の天然記念物 簑曳矮鶏


 

 簑曳矮鶏は鶉矮鶏位の矮小なもので、その姿態は稍々東天紅鶏に似て、いかにも優美なものであるが、由来に就いては文献の徴すべきものがない。 それは高知県下各地に飼養されて居る小型の地鶏と体格、骨体、体色等が似て居るところから、それに由来するものであらうとも云はれて居る。

 

 頸は短くて太く、体躯は稍々長くて方形を呈し、脚は短く、俗に芥色と云って青黒色を帯びて居る。 頸羽及び鞍羽の簑羽の長く垂れて地に曳くものが多かったが、今は甚だ少なくなったさうである。 尾羽は豊かにすらりと流れて地に曳いて居る。

 

 本種の標準体重は雄八二〇瓦、雌六一〇瓦である。

 

 この簑曳矮鶏がいつの頃から土佐で飼い始められたかは知る術もないが、嘗て高知県香美郡明治村及び山田町附近にかなり飼養されてゐたものらしい。 今はその数も減り、高知市その他の地方に飼はれて居るものは十番位に過ぎず、而もその質は昔に比較して著しく劣るさうである。

 

 この簑曳矮鶏は昭和十二年六月天然記念物に指定せられた。