復元の可能な鶏種


 鶉尾鶏

鶉尾鶏(尾長鳥並に諸鶏の記) 五十嵐正龍 大正12年

 

 1.鶉尾鶏身体矮小にして

 2.褐色なり

 3.尾長からずして、丸く巻き込み 

  

 

鶉矮鶏(白色)にしては、体型、尾、立姿に相違があり、鶉尾鶏を描いたものではないかと思われる。

作製年代は特定出来ない。

 

 

 

 

鶉矮鶏(白色)細密画

 

 東京都農林総合研究センター所蔵

 

 五十嵐氏の諸鶏の記及び明治・大正・昭和期の家禽書等より考察するに鶉尾鶏は尾骨を有し、その尾羽は正常鶏のそれに対して非常に短縮した尾であったと想像される。

 

平成24年産鶏に鶉尾鶏に類似した鶏が生れました。

 

雌は鶉矮鶏より胴が長く、そのため前傾の姿勢をとり、

雄は本尾も短く、正常な尾羽より短縮している。

これは尾骨の角度が背線に対して水平となるため、尾が下方に下がり謡尾、本尾が腰蓑羽の長さ程度に短縮して、恰も鶉の姿のように見える。

 



丸尾鶏


平成23年産まれの中に丸尾鶏に類似した鶏が出ました。

雄の謡尾は短縮して本尾に添う。

 

羽色は黄笹

脚は楊柳色

 

平成25年産まれ

雄、雌ともに第二世代

嘴、脚は白色


 

丸尾鶏(尾長鳥並に諸鶏の記) 五十嵐正龍 大正12年

 

 1.鶉尾鶏によく似たものなり

 

   ① 身体矮小にして

   ② 褐色なり

   ③ 其尾長からず

   ④ 丸く巻き込み

 

 諸鶏の記にはチャボについて、桂屋鶏身体矮小白色にして羽と尾に黒色交れり其尾は直立せり、と記し鶉尾鶏との違いを述べている。

 

 長尾鶏を尾の長い鶏(オナガドリ)と読ませた慣習からして、丸尾鶏は尾の丸い鶏の意味と解するべきである。

 

 チャボの尾形に車尾と呼ばれるものがありますが、これはリス尾とも言われリスの尾のように直立し、先端部が下方に湾曲したものです。

 

 丸尾鶏の尾には直立という表現を使用していないため、チャボの尾形とは違うことがわかります。

 


 

家禽標準

 中央家禽協会

 大正12年 1月12日(1923)

 

 尾丸鶉矮鶏雄    丸尾鶏の標準画の掲載されたものとして貴重本である。

            

           耳朶は白色、 脚は黄色を呈する。

           

           チャボほど短脚ではない。

           

            平成28年8月7日

           

 


 

尾丸チャボ(チャボ)  深川景義 昭和3年 (1928) 西ケ原刊行会

 

 雄の形状

一、頭、小。

二、嘴、細長。

三、眼、大にして張る。

四、冠、単冠にして整然たる五歯。

五、肉髯及耳朶、肉髯は大さ中庸にして円く、耳朶は大にして楕円形。

六、頸、太く、短く、程よく湾曲し、頸羽夥多にして長く、よく背を覆ふ。  

七、背、稍長く、広し、鞍羽、簑羽は夥多にして長し。

八、胸、円くして突出す。

九、翼、大にして長し。

一〇、尾、大にしてよく開張し、主尾羽は四十五度の角度をなし、謡羽

  及覆尾羽は長く能く湾曲し、主尾羽を蔽ひ側面より見れば円形を呈する。  

一一、体躯及軟羽、体躯は稍長く充実し、軟羽は稍短し。

一二、脚及趾、腿は小にして長さ中庸、脛は寧ろ細くして短く、趾は真直に開張す。

  

 雌の形状

一、頭、嘴、眼は雄に同じ。

二、冠、小にして五歯。

三、肉髯、は小にして円く、耳朶は大にして楕円形。

四、頸、能く湾曲し、大さ中庸にして頸羽夥多。

五、背、寧ろ長く、尾根に向ひ凹斜向上す、鞍羽夥多なり。

六、胸、円くして突出す。 

七、翼、大にして長し。

八、尾、長さ適度にして能く開張し、覆尾羽は長く能く湾曲し、主尾羽

  を全く蔽ふ、側面より見れば球形を呈す

九、体躯及軟羽、体躯は稍長く充実し、軟羽は寧ろ短かし。

一〇、脚及趾、雄に同じ。

 

 標 準 体 重

  雄   二  百 匁 (750g)  雌   百七十匁 (637g)

  若雄  百七十匁 (637g)    若雌  百三十匁 (487g)

 

 雄の色沢

一、頭 濃赤栗色。

二、嘴 黄色若くは黄色に角色の條線あり。

三、眼 赤色。

四、顔面、冠、肉髯 は鮮赤色。耳朶は白色

五、頸 頸羽は濃赤栗色にして各羽の中央に黒色の縦斑あり、他は黒色。

六、背 濃赤栗色、鞍羽は頸羽に同じ、岬羽は黒色。 

七、胸 緑黒色。

八、翼 主翼羽及副翼羽は黒色にして下端に濃褐色の縁あり、覆翼羽は

  緑黒色にして褶むときは翼を横断して羽面に劃然たる翼閂を現す。

  翼肩は濃赤栗色。

九、尾 主尾羽は黒、謡羽及覆尾羽は緑黒色。

一〇、体躯及軟羽 黒色。

一一、脚及趾 腿は黒色。脛及趾は黄色若くは帯黒黄色。

 

 雌の色沢

一、頭 赤色。

二、嘴 雄に同じ。

三、顔面、冠、肉髯、耳朶 雄に同じ。

四、頸 頸羽は赤黄色にして各羽の中央に緑黒色の縦斑あり、他は胸に

  同じ。

五、背 暗赤褐色にして各羽に稍不鮮明なる二條の黒色條斑あり、羽軸

  は淡し。 

六、胸 背に同じ。

七、翼 主翼羽は黒色、副翼羽は黒褐色にして下端に褐色の細條斑あり、

  他は暗赤色にして各羽に稍不鮮明なる二條の黒色條斑あり、羽軸淡

  し。

八、尾 背に同じ。

九、体躯は胸に同じ、軟羽は暗褐色。

一〇、脚及趾 腿は暗赤色にして、脛及趾は黄色若くは帯黒黄色。

 

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尾丸矮鶏(家禽図鑑) 三井高遂 昭和8年

 

 来  歴

 本種は高知県土佐郡小高坂村字新屋敷に於て作出せらしものにして、慶応年間土佐国中到る処鶉型なる短尾の矮鶏の飼養が流行し、之れをウヅラ尾と称せしが、同地に軽格の士族原甚作氏方に於ても簑曳及び鹿敷統など数種の矮鶏を飼養し、且つ各種矮鶏の交雑を行つたのであつた。

 

原統鶉尾の名称を成す。

 

 家禽図鑑の尾丸矮鶏の記述は、他の絶種した鶏種に比べ内容が具体的である。

 

 尾丸矮鶏は当時の蓑曳矮鶏、鶉矮鶏に比べて最も軽量種であった。

 

  標 準 体 重

   雄  二〇〇匁(750g)、雌  一七〇匁(637g)

   若雄 一七〇匁(637g)、若雌 一三〇匁(487g) 

 

雄の形状の特徴

 

  耳朶は大にして楕円形、白色を呈する。

  尾は大にしてよく開帳し四十五度の角度をなす。

  謡羽及び覆尾羽は長くよく湾曲する

  主尾羽を覆ひ側面より見れば円形を呈する。  

  脛は寧ろ細くして短かく、黄色若くは帯黒黄色を呈する。

 

 雌の形状の特徴

 

  尾は長さ適度してよく開帳しする。

  覆尾羽は長く、よく湾曲しする

  主尾羽を全く覆ひ側面より見れば球形をなす。

  脛は細く短かく、黄色若くは帯黒色を呈する。

 



 

 丸尾鶏(五十嵐氏)と尾丸チャボ(深川氏)、尾丸矮鶏(三井氏)は識された時期が大正12年、昭和3年、昭和8年と近接しているため、同一鶏種名と同定されます。

 

 丸尾鶏について審査標準を以下のとおり想定し、雌雄の形状・色沢に合致する復元鶏の作出を行うものとする。

 

 標準体重は日本鶏のうち最小のものを目標とし、鶉矮鶏よりも軽量の鶏を理想とし将来的にはより軽量となることを目指す。

 

  標準体重  雄 500g  雌 400g   平成26年1月29日

  理想体重  雄 450g  雌 360g   平成28年6月23日

       

 丸尾鶏の形状・色沢については、深川氏の著書「チャボ」に尾丸チャボ(一名原統)として述べられているところを採用する。

 

 蓑曳矮鶏との相違点。

  ① 脛及び趾が黄色である。

  ② 尾羽は地に接しない。

  ③ 鞍羽、蓑羽が地に接しない。

  ④ 尾羽を後方から見たとき球形を成していない。

 

  尾羽の形状が蓑曳矮鶏と区別できることが重要となる。

   側面から見ると円形を呈するが、後方から見たときは、おがみ尾(拝尾)の形となる。

 


 

褐色尾鶏の形状

   
  性
部 位  
 太さ中等で円い。顔は小さく円い。
 単冠で大きさ中等、頭上に緊着直立し、整然と五歯に分裂する。
肉  髯  大きさ中等で円い。
 細く、長く、ほどよく湾曲する。 
 大きく張る。
耳  朶  滑らかにして大きく、楕円形。
 太く、短くほどよく湾曲し、頸羽は夥多にして長い。
   よく背を覆い、両側に垂れて咽喉下部に及ぶ。
躯  幹  やや長く方形で、軟羽はやや短し。 
 やや長く、広し。
 円くして突出す。
 やや長く充実し、軟羽はやや短い。
 大きく、長く、よくたたみ、翼尖は垂下して腿を覆う。
蓑  羽  鞍羽、蓑羽は豊か。
   大きくよく開張し、主尾羽は四十五度の角度をなし拡張する。  
尾  謡羽及び覆尾羽は長く能く湾曲し、主尾羽を覆い側面より見れば
  円形を呈する。 
脚 ・ 趾  腿は小さく、脛は短い、趾は真直ぐ、よく開張する。

 

   
  性
部 位  
 太さ中等で円い。顔は小さく円い。
 単冠で大きさ中等、頭上に緊着直立し、整然と五歯に分裂する。
肉  髯  大きさ小さく円い。
 細く、長く、ほどよく湾曲する。 
 大きく張る。
耳  朶  滑らかにして小さく、楕円形。
 太さ中等で、短くほどよく湾曲し、頸羽は夥多。
   よく背を覆う。
躯  幹  やや長く方形で、軟羽はやや短し。 
 やや長く、広し。
 円くして突出す。
 やや長く充実し、軟羽はやや長い。
 大きく、長く、よくたたみ、翼尖は垂下して腿を覆う。
蓑  羽  鞍羽、蓑羽は豊かで長い。
      大きくよく開張し、主尾羽は四十五度の角度をなし拡張する。

覆尾羽は長く能く湾曲し、主尾羽を全く覆う。

  側面より見れば球形を呈する。
脚 ・ 趾  腿は小さく、脛は短い、趾は真直ぐ、よく開張する。

 


 

褐色尾鶏の色沢

 

  性
部 位  
 濃赤栗色
冠 ・ 顔  鮮赤色
肉  髯  鮮赤色
 黄色若くは黄色に角色の條線がある。
 赤色
耳  朶  白色
 濃赤栗色、各羽の中央に黒色縦斑あり、其の他の頸部の羽毛は黒色。
 濃赤栗色、岬羽は黒色、鞍羽・蓑羽は夥多にして長く濃赤栗色である。
 緑黒色 
 黒色
   主翼羽及び副翼羽は黒色にして下端に濃褐色の縁あり、覆翼羽は

緑黒色にして、褶む時は翼を横断して羽面に劃然たる翼閂を現は

す。

        翼肩は濃赤色。
 主尾羽は黒色謡羽及び覆尾羽は緑黒色。 
脚 ・ 趾  腿は黒色、脛及び趾は黄色。
根  色  石盤色

 

  性
部 位  
 赤色
冠 ・ 顔  鮮赤色
肉  髯  鮮赤色
 黄色若くは黄色に角色の條線がある。
 赤色
耳  朶  白色
 赤黄色にして各羽の中央に緑黒色の縦斑あり、他は胸に同じ。           
 暗赤褐色にして各羽に稍不鮮明なる二條の黒色條斑あり、羽軸は淡し          
 背に同じ。 
 軟羽は暗褐色。         
   主翼羽は黒色。

 副翼羽は黒褐色にして下端に褐色の細條斑あり他は暗赤色にして、

       各羽に稍不鮮明なる二條の黒色條斑あり、羽軸淡し。             
 背に同じ。           
脚 ・ 趾  腿は暗赤色、脛及び趾は黄色。
根  色  石盤色 

 

白色丸鶏の色沢

 

   性                 雄・雌

部 位  
 純白色
冠 ・ 顔  鮮赤色(雄)・ 淡赤色(雌)
肉  髯  鮮赤色(雄)・ 淡赤色(雌)
 
 赤色
耳  朶  白色

 純白色

 純白色

 純白色

 純白色

 純白色

蓑  羽

 純白色

脚 ・ 趾

 

根   色

 純白色


白色丸尾鶏の嘴、脚・趾の色は白色鶉矮鶏、白色蓑曳矮鶏と同様に黄色を採用することとする。

顔面に白色を呈するのは欠点である。

 

平成26年3月24日撮影 白色丸尾鶏


 

赤色丸鶏の色沢

 

    性                 雄・雌

部 位  
 赤色
冠 ・ 顔  鮮赤色(雄)・ 淡赤色(雌)
肉  髯  鮮赤色(雄)・ 淡赤色(雌)
 黄色 
 赤色
耳  朶  白色

 赤色(雄)・ 淡赤色(雌)

 赤色(雄)・ 淡赤色(雌)

 赤色(雄)・ 淡赤色(雌)

 淡赤色(雄)・ 淡赤色(雌)

 赤色(雄)・ 淡赤色(雌)

蓑  羽

 赤色(雄)・ 淡赤色(雌)

脚 ・ 趾

 黄色

根   色

 淡赤色


平成28(2016)年11月21日撮影 赤色丸尾鶏


 

赤色鶉矮鶏

 


平成26(2014)年3月22日撮影 黄笹丸尾鶏